本研究代表者は自ら石器の三次元計測を行い計測データの応用に取り組むとともに、協力者らとともに研究手法の確立、周知・共有を目指す研究会・ワークショップを主催してきた。また海外の研究者とも交流、情報交換を行い、現時点における最新の動向を把握し、自らの研究に反映させてきた。本研究では、これまでの取り組みを踏まえ体系化を進め、日本の考古学界においてすでに蓄積されている資料への適用し、洗練化することを目指す。
石器研究に限らず考古学研究においては、対象資料の観察・計測的属性の把握が研究者の専門知識、鑑識眼に依拠するため、客観化、共有化が困難な場合が少なくなかった。各研究で個別の観察・計測が実施され、データの共有が難しい状況では、議論が噛み合わないこともある。本研究の骨子は、石器研究における観察・計測的属性について定量的に検証可能な示標化を目指すものである。本研究を通じて確立される分析手法は、議論の前提となる情報を再現可能なかたちで共有し、資料論・方法論の先へ議論を進めるための基盤を提供する。あらたに追加される資料だけでなく、すでに多量に蓄積されている既報告資料にも適用可能なため、学史・研究史上の遺産(レガシー)を次代の研究に活用するステップにもなる。三次元計測という新技術を踏まえた新しい分析手法の確立は、考古学研究の進展に大きく寄与するものと考える。
(English will be come later)